言葉はいらない
日本に4月にきた中国のSさん。
来て早々の健康診断にひっかかり、ちょっと大変な病気だったということで、
5月半ばごろから、早々に入院してしまいました。
そして、なかなか退院できず、なんと、9月末までずうううううううううっと、病院生活を送る羽目に。
当初、半年の予定で日本に来ていたものですから、帰国予定日までずっと病院にいたことになります。涙
最終的にはあと半年滞在を延ばせることになったので良かったのですが、
このまま帰国していたら、日本のことは、ほぼ病院しか知らないことになっていたでしょう・・・。お気の毒に。
彼が入院しているあいだ、電話はできるということなので、ときどき電話をしました。
マ: 「Sさん、どうですか?何してる?」
S: 「先生、いま、ごはんを食べました。」
マ: 「これから何をする?」
S: 「もうすぐ、体温を計ります」
病院の中の生活は単調で面白くなく、話す話題もありません。
それでも、ひとりでつまらないだろうし、日本に勉強しに来たのだから、すこしでもお手伝いできればと思い、
暇を見つけては、声を聞くために電話をかけていました。
S: 「先生、今回も検査の結果が悪かったですから、退院できません」
マ: 「そっか。じゃあ、あと少しだね。」
S: 「先生、退院したら、また日本語勉強したいです。」
マ: 「そうだね。一緒に頑張ろうね」
こんな感じで、話していたのですが、
つい先日、急に「先生!!!退院しました!!!」とSさんが現れました。
まだまだ日本語がよくできないSさん、それ以上言葉が出てきません。
私も、喜びのあまり言葉が出てこず、ふたりで無言の笑顔のまま見つめ合うだけ。笑
気を取り直して、さっそく日本語の勉強ができるように、いろいろ手続きをしました。
数か月ぶりに、日本語のテストをしてみたら、飛躍的に伸びていてびっくり!!!
聞いたところ、病院で消灯時間を大目に見てもらって、12時過ぎまでずっと勉強していたとのこと。
すごいよ、、、Sさん・・・・涙
よかったね、よかったね、という私を、ずっと笑顔でみつめるSさん。
もう今日やることは終わったから、帰っていいからね、といっても帰ろうとしません。
マ: 「どうしたの?何か質問ある?」
Sさん: 「いいえ。」 にこにこ
マ: 「どうしたの?」
Sさん: 「言葉が出てきません。」
マ: 「中国語で言ってもいいよ。」
Sさん: 「中国語でも、言えません。言葉の問題じゃないです。気持ちが言葉にできません」
これ以上見つめられると泣いてしまいそうだったので(笑)、
マ: 「これから、また一緒にがんばろうね。じゃあまた来週ね」といって帰してしまいました。
Sさんは、にこにこしながら、ゆっくり帰っていきました。
Sさんの気持ちは、とてもよく伝わってきました。
言葉を教える仕事をしていますが、
本当に心から伝えたいことって、言葉はいらないんですよね。
言葉を教える仕事をしている私ですが、やっぱり、言葉よりは心だなあと、つくづく感じた1日でした。
Sさん、退院おめでとう!今度、退院祝いの食事でも行こうね!!