日本語教師の私にとって、今はお別れのシーズン。
留学を終えた学生たちが帰国していく寂しい時期です。
学生ひとりひとりと思い出があり、どれもすてきな私の宝物なのですが、
今日はAさんというロシアの学生から学んだことを書いておきたいと思います。
彼女は一年前、あまり日本語ができませんでした。一番下から二番目のレベルのクラスを受けていたAさん。
ただ、やる気だけはあったのか、彼女にはどう考えても難しい漢字のクラスを受けたいとやってきました。
彼女がどんなに頑張っても、この漢字のクラスにはついて行けないだろうと思ったのですが、
あなたには難しすぎるから無駄よ、とはいえず、受けさせていました。
正直、漢字のクラスなんておもしろいことは一つもないと思うんです。
わたしの授業も、そんなにおもしろいことをやっているわけではなく、
淡々と教科書にある漢字の例文を紹介していって、読み方と書き方を確認するだけの授業。
しかし、Aさんは毎回熱心に参加するのです。
私が、例文の意味を説明したり、そこからちょっと付け足して説明を加えたりすると、前で頷くAさん。
いや、もちろん、他の学生たちも一生懸命受けてくれていたんですけれども、
Aさんからは、こう、なんというのでしょう、熱気が伝わってくるんですよね。
何かを説明して、「じゃあ、他にはこの表現はどんな時に使えるでしょうね~?」と言うと、
一生懸命考えて、どの学生よりもいい例を出してくるAさん。
クラスには、彼女よりずっとできる人たちもたくさんいたのに、彼女は本当にがんばりました。
最初の学期は、同じクラスを受けていた彼氏と一緒に徹夜をしたそうで、70点ちょっととりました。
1問1点の、100問のテストなので、純粋に70個正解したということです。すごい!!!
次の学期になると、彼はもう帰国してしまって、日本にはいないので、
申し訳ないけれど、正直Aさんは合格できないんじゃないかと思っていました。
毎週、彼と一緒に勉強していたのを知っていたからです。
彼が割と真面目な学生で、日本語も上手だったので、彼が引っ張ってくれていると思っていたのです。
ところが、彼女は彼がいなくても一人でがんばり、
期末テストは、前回を上回る84点!!!
採点しながら、もう涙が出そうでした・・・・。(これを書きながら、ちょっとうるっとしている)
おそらく、寝ないで勉強したのだと思います。
自分でもそこまで書けるとは思っていなかったらしく、点数を見てとても喜んでいました。
私は、このAさんから、日本語教師として一つ学んだ気がします。
それは、本人のやる気に勝るものはない、と言うことです。
今このぐらいのレベルだから、とか、漢字の国ではない学生だから、とか、
そんなことで決めつけてはいけないんだなあと思いました。
ときどき、漢字オタクの学生なんかもいて、文法はできないけど漢字だけはできる、と言う人もいますが、
Aさんはとくにそういうことはなくて、純粋に日本語の勉強がしたくて頑張っただけでした。
文法も頑張ったし、会話も頑張ったし、本当によく頑張りました。
Aさんのような学生に出会えたのは、教師として本当にありがたいことだなと感じました。
Aさん、わたしの学生になってくれて、本当にありがとうね!
最後に、これは、Aさんがくれたロシアからのプレゼントで、テーブルクロスかな?
これを見るたびに、あなたのことを思い出すと思います。