無事に試験がおわり、先生と学生という関係を超えて、学生たちとより親しくなれた気がします。
中でも、とても印象的な学生がいます。
Vさんという男子学生です。
彼は、私の会話・スピーチのクラスにいた学生です。学期が始まってしばらくこなかったので、来ないものと思っていたら、ある日突然メールが来ました。
これから授業に参加させて欲しいとのこと。
正直えっ?と思いましたが、勇気を出して連絡したことを評価し、参加を認めました。
授業に来るようになって分かったのですが、彼は心に不安をかかえており、うまく話せない、つまり吃音がありました。
授業に来ても、なかなかうまく言葉が出てきません。
とても良いことを言いますが、息が詰まって、とても苦しそうに話します。
6歳のときから自覚があるそうで、ずっと自分の不安と闘ってきたそうです。
周りの人が何を考えているのか、自分はおかしくないのか、いつも不安があるそうです。
クラスでは、自分のことについてスピーチをしないといけないので、彼には敷居が高くてなかなか来られなかったのでしょう。
冷たくあしらったりしないで良かったと心から思いました。
幸いクラスメイトにも恵まれ、彼はスピーチもしました。それも、自分の心と吃音の問題について。
彼は、それをきっかけに、自身の不安の問題や気持ちなどについて、授業以外でもメールをくれるようになりました。
私のクラスにいると、とても心が安らぐと書いてくれました。
私にとっては、何よりの褒め言葉です。
さて、このクラスの期末試験は、何も見ないであるテーマについて話さなければなりません。
緊張したり不安になったりすると吃音が出る彼のことが心配でなりませんが、私には何もできません。
試験のテーマは3つ。
教育問題、環境問題、そして自分の好きな本当または映画です。
くじ引きで決めるので、学生は全部準備をしないと、どれが当たるか分かりません。
Vさんも、頑張って準備したようです。
彼は、もし、好きな本または映画だったら、「英国王のスピーチ」についてすると決めたと教えてくれました。
ご存知の方も多いと思いますが、吃音の英国王が、感動的なスピーチをする話です。
自分と重なる部分があるのかも知れません。
私は、そのスピーチが聞きたいと思いましたが、もちろんそんなことは出来ません。
本番では、結局環境問題のくじをひいた彼。
頑張って準備した英国王のスピーチについての話は聞けませんでした。
そこで、私は、彼からきたこれまでのお礼が書かれたメールへの返事に、一緒に勉強できて嬉しかったこと、そして、可能であれば、好きな映画についてのスピーチを聞かせて欲しいことを書きました。
すると、数日たった今日、彼から短いメールと添付ファイルが!!
そうです。
Vさんが、旅先のざわざわした空港で録音して送ってくれたのでした。
とっても素敵な声のVさんのスピーチは、少しだけ間が長いところもありますが、詰まったりせずにとてもきれいでした。
私のリクエストに答えてくれたこと、彼の素敵な声、とても素晴らしい内容に感動して、聞きながら涙が溢れてしまいました。
どの学生との出会いも、本当に良かったのですが、Vさんと出会えたことを、とても嬉しく思います。